塀の中で盲導犬候補の子犬を育てるパピープログラム

「がんばれよー!」

「元気でな!」

犬を抱きしめ、ほおずりする人。体をさすり、頭をなでる人。犬のほうもひざに乗ったり、顔をなめたりして、全身で甘えています。これは、島根あさひ社会復帰促進センターでおこなわれた第8期盲導犬パピー育成プログラムの修了式の光景です。33人の男性受刑者が、自分たちが10か月間育てた6頭の犬と別れを惜しみました。

島根県浜田市旭町にある同センターでは、公益財団法人日本盲導犬協会との協働で、受刑者が盲導犬候補のパピー(子犬)を育てるという日本初の試みをおこなっています。訓練生(同センターでは受刑者のことをこう呼びます)は、日本盲導犬協会から託された生後2〜4カ月の子犬と月曜から金曜までともに生活し、週末預かる地域のボランティアと協力しあいながら、人といるのが楽しいと思えるような犬に育てる役割を担うのです。

このプログラムの最大の目的は、不足している盲導犬を一頭でも多く視覚障害者のもとに送り出すこと、そして、そのプロセスを担ってもらうことで、訓練生の人間的成長を促し、更生を進めることです。よくアニマルセラピーと混同されるのですが、目的は訓練生の癒やしではありません。彼らが塀の中でパピーウォーカーを務めるという社会貢献のプログラムなのです。実際、ここで育った第7期までのパピー40頭の中から、すでに12頭の盲導犬が誕生し、視覚障害者の人々のよきパートナーとなっています!

刑事施設のなかで動物を育てるのは、手間もかかるし、気も使います。それでもおこなうメリットは何なのでしょうか?

一つは、動物の存在が社会的触媒作用をもたらすということです。パピーのいるユニットは他のユニットに比べ、人間どうしのトラブルが圧倒的に少ないという調査結果が出ています。また、心を閉ざし、内に引きこもりがちな人でも、パピーの世話をとおして会話に参加し、だんだん明るくなっていきます。パピーの存在はともすればネガティブになりがちな刑務所の人間関係のよい潤滑油となっているのです。

二つ目は、動物をケアすることが人としての成長や心の回復を助けるということです。動物は相手が犯罪者であろうと病人であろうと、自分をかわいがってくれる人には無条件の信頼と愛情を与えてくれます。動物に信頼され、愛されることによって、人に心を開けなかった人が少しずつ心を開き、忍耐と責任感を持って世話をするようになり、いっしょに世話をする仲間たちとのコミュニケーションもよくなっていくのです。また、人への思いやりも育っていくのです。

とくに、盲導犬パピー育成プログラムでは、職業訓練として点字点訳を学びつつパピーを育てる方式のため、それまで考えたこともなかった視覚障害者への想いが各人に生まれていくのです。社会を傷つけた人たちだからこそ、自分たちが社会に還元できるものを見いだすことの意味は大きいのです。誰かに何かを与えられることほど、その人の自己肯定感を高めるものはないと思うからです。

修了式のあと、パピーたちは日本盲導犬協会の訓練センターで、いよいよ盲導犬になるための訓練に入ります。実際に盲導犬になるのは3割ほどで、あとは適性に応じて家庭犬になったり、PR犬や繁殖犬になります。どの道が選ばれるにしても、「誰かに愛され、幸せに暮らしてほしい。」それが訓練生たち皆の願いなのです。

震災で一念発起、一人でつくった保護猫カフェ「ねこかつ」

一人で始めた保護猫カフェの活動が周囲の共感を呼び、東京・新宿のデパートに計300匹の猫を集めて国内最大級の保護猫譲渡会を開催するまでになりました!

保護猫カフェ「ねこかつ」は、西武新宿線の「本川越」駅から歩いて数分、賑やかな商店街の中にあります。人の膝でくつろいだり、キャットタワーに飛び乗ったり、思い思いの場所でリラックスする猫たち。ここにいる約30匹の猫たちは、ひどい環境で飼われていたり、あるいは目も開かないうちに保健所に収容されたりして、救い出された子ばかりです。カフェでのんびり過ごしながら、新しい家族になってくれる人が現れるのを待っているのです。

「ねこかつ」の店主梅田さんは、「44年生きてきて、猫を飼っていなかった時期は1日もない」というほど、子どもの頃から大の猫好きです。小学校の作文にも「大きくなったら保健所にいる猫を救いたい」と書いていたそうです。

「社会人になってからは、稼いだお金で少しでも猫の殺処分を減らすために近所の野良猫を捕獲して、避妊手術をしてからまた地域に戻す活動を地道にやってきました。近所の野良猫の数が減ってきた実感もありましたが、それだけじゃだめだと思うことがあり、外資系の流通企業を辞めて、ここをオープンさせました」

きっかけは6年前に起きた東日本大震災で、福島県の避難地域に取り残された猫や犬を保護するボランティア活動でした。大災害でやむなく悲惨な状況に置かれた猫や犬をみて、「もっとできることがあるはず」と一念発起。物件探しから内装リフォームまでほとんど一人で行い、保護猫カフェ「ねこかつ」をオープンさせたのです。

「ねこかつ」という店名には、“婚活”や“就活”と同じくらい、猫の保護活動も一般的に広まって欲しいという願いを込めたそうです。『まずは保護猫に触れ合ってもらうこと』を目指して、商店街の人通りの多い場所を選んでカフェを開かれました。より活動を広めたいと、店の近くにある「川越市産業観光館」に依頼し、保護猫の譲渡会の会場を借りることにしました。今では月に2回、定期的に開催し、地元の人にも知られています。さらにこの活動を知って、同じ商店街にある丸広百貨店から「うちでもどうぞ」と声をかけられ、これがきっかけとなり、同店で「sippo特別写真展 みんなイヌ、みんなネコ」が開かれ、保護猫の譲渡会も同時開催されました。

こうして梅田さんが一人で始めた活動は徐々に縁がつながり始め、年間約500匹の猫や犬の新しい家族が見つかっています。『もっとできることがあるはず』の、梅田さんの精神を尊敬し、見習いたいものですね。

犬や猫の殺処分の現場〜譲渡増やす努力続く〜

飼い主がいない、野良犬や野良猫たち。自治体に保護されたとしても、新しい飼い主が見つからなければ、やむなく命を奪われます。その「殺処分」をゼロにすることを目標とする自治体も多く出てきましたが、まだまだ課題も山積みです。

センターに来た犬猫はまず、病気やしつけの状態、大きさなどを検査され、元の飼い主に返す「返還」や、新しい飼い主に渡す「譲渡」ができるか判断されます。いずれもできないと判断されると、殺処分を待つことになります。

埼玉県熊谷市にある「動物指導センター」によると、殺処分数は毎年減っているといいます。ピークだった1985年度に比べ、2016年度は犬が約0・7%に、猫はピークの86年度の1割以下になりました。動物愛護の観点から、殺処分ゼロを目指す自治体も出てきました。方法は主に二つ。新しい飼い主への「譲渡」を増やすか、施設への「収容」を減らすかです。

神奈川県は譲渡を増やし14年度までに犬猫殺処分ゼロを達成しました。同県動物保護センターによると、犬猫を引き取るボランティアの数が増えたことが大きな理由だそうです。昨年度同センターが譲渡した犬169頭のうち155頭が、猫571匹のうち560匹がボランティアに引き取られました。ボランティア間の連係を深め、負担集中を防ぐといいます。

埼玉県は収容数を減らす方法をとっています。猫や飼い主から持ち込まれた犬は、健康であれば基本的に引き取らない方針です。ただ、収容数を減らすことには問題点もある。13年の改正動物愛護法で、自治体は業者などからの犬猫の引き取りを拒否できるようになりました。そうすることで、断られた飼い主の中には、(ペットを大量に引き取り劣悪な環境に置く)『引き取り屋』に連絡する人もいるそうです。引き取り屋の需要が高まってしまった、と指摘する声も上がっています。県もそうした指摘は把握しています。県動物指導センターは、「引き取りをやめれば一時的に殺処分はゼロになる。だが繁殖能力のある犬猫を野放しにすることで、長い目で見れば殺処分は増えてしまうのではないか」と考えます。そこで県が特に力を入れるのが、人に慣れておらず、引き取り先が見つかりづらい子猫を減らそうというもの。野良猫が子猫を産まないよう、不妊・去勢手術の普及に努めています。野良猫を「捕まえ(Trap)」「不妊・去勢し(Neuter)」「元の場所に戻す(Return)」という「TNR活動」を進めています。23年度には殺処分数を犬猫合わせて500頭未満に減らすのが目標です。

こういった自治体が一つでも多く増え、殺処分に対しての真摯な取り組みがなされる事を、切に祈るばかりです。

米国の動物介在プログラム 「猫たちといると心が温かくなる」

ワシントン州内の刑務所で広くおこなわれている保護猫の社会化プログラム。モンロー刑務所(MCC)の取り組みが他の刑務所と違うところは、重い精神疾患を患う男性受刑者だけを収容する特別ユニットでプログラムがおこなわれていることです。モンロー刑務所と協働してプログラムをおこなっているのは猫専門の保護団体パーフェクト・パルズ。2006年にスタートし、最初の8年間は生後6カ月までの子猫を対象にしていましたが、2014年からはシャイで人に慣れていない大人の猫も託すようになりました。これまでになんと750匹以上、刑務所でケアを受けたほぼすべての猫たちの譲渡に成功しています。また、受刑者が猫を傷つけるようなこともいっさいないということです。

毎週火曜日にはボランティアが刑務所を訪れ、猫たちの状態をチェックします。特別ユニットに入ると、15人の受刑者がキャリーを持って集まってきます。みんな笑顔で、刑務所のスタッフも一緒になって猫たちをなでたり、抱っこしたりと、なんとも和やかな雰囲気なのです。

多頭飼育崩壊の家からレスキューされた二匹の猫を1年近く世話しているという受刑者は話します。

「この子たちは、最初ここに来たときはおびえ切っていて、いっさいキャリーから出てこなかったんだ。キャリーから出して抱き上げられるようになるまで4カ月かかったよ。でも、いまでは僕のすぐそばでくつろぐようになった。ひざ乗り猫にはならないだろうけど、家庭のペットには十分なれると思うな」

受刑者たちは、Tタッチと呼ばれるマッサージ法で猫たちの緊張をほぐしたり、そばに来ればおやつをあげるなどして、少しずつ彼らの警戒心を解いていきます。

また、このプログラムでやりがいを感じるのはどんなときなのか、受刑者は語ります。

「猫が僕を信頼してくれたとわかったとき。ずっと隠れていた猫がベッドに乗ってきて、ゴロゴロのどを鳴らして甘えてくれる。人生で最高の瞬間だよ」

「猫たちといると、心が温かくなるんだ。猫たちがどんなことをしても、僕は絶対叱らない。この子たちはもう十分怖い思いをしてきたんだから。引っかく猫もいるけど、それはおびえているからだ。凶暴だからじゃないんだ」

自分が世話した猫を手放す瞬間の気持ちについても、受刑者は語りました。

「まるで自分の一部が去っていくような感じで、すごくつらい。別れがつらくて、半年間プログラムを休んだこともあるんだ。でも、猫たちのおかげで、ここにいる時間が少しはましになる。愛する者がいることでね」

こう語る受刑者は、仮釈放なしの終身刑を科されています。でも、もしもいつの日かここを出ることができたら、『捨てられた動物たちを救う仕事をしたい』と彼は言っています。

パーフェクト・パルズの担当者スーザン・バークはこう話します。

「この人たちがもっと早くに適切な治療を受けられていたら、被害者もいなかったし、一生を塀の中で過ごすことにもならなかったと思うと、ほんとうに悲しい。このプログラムは、そんな彼らに少しでも意味のあることをするチャンスを与えています」

特別ユニットを担当する刑務所スタッフも言います。

「彼らは重篤な精神疾患を抱えていますが、とてもそんな風には見えないでしょう?猫たちがいるおかげで、ほんとうに心情が安定しているんです。自分以外の誰もケアしたことがなかった人たちが、こうやって他の命をケアする経験をして、変わっていく。それはすごいことですよ」

猫も人も救われるモンロー刑務所の保護猫プログラム。その成功を支えているのはなんと言っても、受刑者とともに働くことをいとわない保護団体とボランティアの存在です。パーフェクト・パルズでは刑務所に行くボランティアの確保に苦労したことはなく、フードや猫砂、おもちゃなどもすべて寄付で賄えているといいます。

犬もそうですが、猫もまた、自分を愛し、大切にしてくれる人には無条件の愛情で応えてくれます。そんな動物を介するからこそ、刑務所という壁を乗り越えることができるのかもしれないですね。

まずはアニマルシェルターに収容された犬猫達の存在を知るということ。

犬猫を収容する施設は、日本では動物愛護センター、保健所、管理所、食品衛生課など、様々な名所がついていますが、これらはすべてアニマルシェルターです。里親探しが行われることもありますが、殆どが殺処分されているのが現状です。

米国ロサンゼルスでカメラマンをしているジョン・ウォンさんは、高確率で殺処分が行われているアニマルシェルターで収容されている犬、猫、その他動物たちの写真を撮り続けています。ジョンが撮影した写真はフェイスブックやインスタグラムにて、配信されています。

メディアでもよく取り上げられていますので、これらの写真に見覚えがある方もいらっしゃるかもしれません。

ジョンはカメラマンとして、アニマルシェルターに収容された動物達の写真を撮り続け、SNSで配信することで彼らの存在をもっと多くの人達に知ってもらいたいと、写真を撮ることで動物愛護のボランティア活動をしています。

いろんなボランティアの形があります。決して、行き場のない動物達を保護して里親探しをするだけが、愛護ボランティアではありません。自分にできることを各自が懸命に考えて、それぞれが可能な範囲で行動を続けていけば、もしかしたらいつか何かが変わるかもしれません。一番いけないのは、助けを求めている存在が目の前にいても見て見ぬふりをすることや、私たち人間が作り出してしまった悲しい現実を知ろうとしないことだと思います。

まずはシェルターに収容されている動物達の存在を知ることから始めましょう。SNSには、いろんな動物たちの悲しい写真が出回っています。その中でもジョンが撮った写真は、多くの人々の心にとても響くものだと感じます。

『アニマルシェルター』や『動物愛護センター』という名前をつけている場所で、命の期限を決めて殺処分が行われている事実を案外知らない人が多いことが、SNSを見ているとよく判ります。”シェルター”というのは、直訳すると、本来、行場のない人や動物を収容して保護し守る所を指します。なので、同じように『動物愛護センター』という言葉がついていると、収容された動物達を愛しみ里親探しをする場所だとつい思ってしまいますよね。でも実際は、一部の殺処分ゼロの施設を除いて、行政が運営する”アニマルシェルター”や”動物愛護センター”の現実は、収容数に限りがあるため、命の期限をつけてまだ生きれる命を殺処分する処分場となっています。つまり頭数管理をする場所になっているというのが現実ではないでしょうか?

それを知らずに迷い犬、捨て猫などを保護した人や、なんらかの事情があって途中で飼えなくなった人たちが、誰か新しい飼い主を見つけてもらおうとこれらの場所に犬猫たちのことを考えて良かれと思い込んで連れて行ってしまう…という事が、実際起きているのです。後で、自分が連れて行った犬猫が殺処分されてしまったと知って、ショックを受け、とても後悔する人も実際にいらっしゃいます。

しかしながら、アニマルシェルターや動物愛護センターなどが殺処分することを責めるべきではないでしょう。そもそも、捨てる人がいるから悲惨な運命を背負わせられる動物達がたくさん存在してしまうのです。たとえいかなる理由があろうとも、一度一緒に暮らし始めたら、家族として最後まで一緒に暮らすべきではないでしょうか?犬猫たちの命を軽く考えすぎている人たちがいることが、大きな問題なのではないでしょうか?

是非一度想像してみてください!

突然、家族だと思って信頼していた人から捨てられることを。

突然、住み慣れた家から追い出されることを。

突然、知らない場所に置きざりにされることを。

突然、迷惑だと通報され、捕獲されて、冷たいコンクリートと鉄格子の中に、強制的に入れられることを。

 

 

そして最後にどうか想像してみてください。
突然、酸素を奪われ窒息させられ、苦しくて苦しくてのたうち回りながら死ななければならないことを。

まだ十分生きていける健康体なのに、無責任な飼い主たちが捨てたせいで、犬猫たちは生きる権利を突然奪われてしまうということになりかねません。あなたのことを愛して信じ続けている家族の一員を、いかなる理由が生じようが、どうか途中で放り出さないでください。彼らはいつかきっとあなたが迎えに来てくれるのだと信じ続け、冷たい檻の中であなたが迎えに来てくれるのをひたすら待ち続けていることでしょう。一度人間と一緒に暮らしていた犬猫たちはそういうものなのです。犬や猫たちにも、人間と同じ温かい血が流れています。そして感情がちゃんとあるのです。

最後に、数々の犬たちの写真を撮り続けているジョンが、人々に発信したメッセージをご紹介しておきます。

『我々は彼らを家畜化し、そして我々は今、彼らに対して過ちを犯しています。里親になって彼らを引き取ってください。どうか命をお金で買わないでください。』

捨て犬の“十戒”を知っていますか?

あなたの愛犬は今幸せそうな顔をしていますか?日本または世界には、飼い主から捨てられてしまい、人間不信になってしまう犬猫や、中には殺傷処分をされてしまう犬猫が多数います。

捨て犬の“十戒”というのをご存知ですか?捨てられてしまった犬の切ない気持ちを表しています。今、犬を飼っている方、またこれから飼おうとしている方には必ず知っておいてほしい内容なので、ご紹介します。

1. 僕を迎えてくれた時の事は決して忘れません。暖かい家族の中で幸せでした。ご主人様との楽しい思いでは決して忘れません。

2. ご主人様が望んでいるようには振る舞えなかったかもしれません。僕はあまり可愛らしくなかったかもしれません。でも、ご主人様に喜んでもらいたくて、精一杯頑張ったことだけは本当です。

3. ご主人様がいなくなっても、きっと迎えに来てくれると思って待っています。側にいられなくなった訳は良くわからないけど…僕を嫌いになったからじゃないと自分に言い聞かせています。

4. 僕を産んでくれたお母さん、お父さんに、ありがとうって言いたい。こうして楽しい思い出を宝物にできたのも、命を与えてくれたからです。生きているから味わえたのです。ありがとう。

5. 今は、たくさんの仲間たちと一緒に暮らしています。でもみんな悲しそうです。僕もなぜか寂しい、物足りない気持ちでいっぱいです。

6. 多くの仲間達は、連れていかれ二度と顔を見ることもない毎日です。そのときの悲しそうな目を見たことがありますか。

7. 一部の仲間達は、たまに新しいご主人が連れて帰ります。ご主人様が迎えに来てくれないなら、僕も新しいご主人様に連れて行かれるかもしれない。優しいご主人様だったら嬉しいけど………

8. 僕にはご主人様を選ぶことはできません。でも僕を迎えてくれるご主人様が、どこかにいるかもしれない。もしそうなったら、今度はもっともっと気に入られるように頑張ります。

9. ご主人様、早く僕を迎えに来てください。そして今度こそずっとそばに置いてください。それだけが僕の願いです。

10. ご主人様、これだけは覚えておいてください。僕だって生きているということを。心だってちゃんとあるということを。天に召される最後の時まで、ご主人様に尽くしたいと思っていることを。

国の偉大さと道徳的発展は、その国における動物の扱い方で分かる

ピースワンコ・ジャパンの本拠地がある広島県神石群に、「犬塚物語」という伝説が残っています。

村を荒らす狸の化け物に長く苦しめられていた村人たちが、助けを求めて出雲の賢人を訪ねました。しかし、賢人は旅に出て留守。かわりに借りて帰ったのが、飼われていた「権の守」という大きな犬だったでした。ある日、村人と権の守は力を合わせ、化け狸の退治に乗り出します。勇猛果敢に噛みついていった権の守の活躍で、ようやく狸を仕留めたが、深手を負った犬も看病の甲斐なく息絶えてしまいました。村人は嘆き悲しみ、権の守を手厚く葬りました。今も地域には、権の守の墓を建てた「犬塚」、訓練をした「犬の馬場」などの地名が残り、供養祭も行われています。人と犬が大昔から互いに助け合い、支え合って暮らしてきたことを、この伝説は今に語り継いでいます。

そんな大切なパートナーであるはずの犬や猫が、人間の身勝手によって捨てられ、命を奪われている…そのことに対する「義憤」がピースワンコ事業の出発点でした。残酷な殺処分の現実を伝え、ドイツや北欧を手本に、助かる命をすべて救うことに、毎日全力を注いでいます。しかし、道のりは決して楽なものではありません。

2016年4月、ピースワンコでは、広島県の殺処分対象の犬をすべて引き取るようになりました。毎週のように20〜30頭が県の動物愛護センターなどから入ってきて、新しく建設した犬舎もすぐに埋まっていきました。県内の犬の殺処分数は、2015年度には792頭と4年前の3分の1ほどにまで減っていましたが、翌16年度に保護したのは1300頭以上。17年度はさらに大幅に増え、1800頭に迫る勢いでした。今も犬舎の増築を続け、なんとか引き取りに対応しています。

保護団体の方たちは、「殺処分ワースト県」の汚名を返上しようと奮闘されてきましたが、社会は果たしてどう変わったのか?広島県の犬の「殺処分ゼロ」はもうすぐ3年目に入るが、県民の意識も、行政の本気度も、残念ながら理想にはほど遠いと言わざるを得ないということです。

インド独立の指導者マハトマ・ガンジーは、動物と人間社会の関係について次のような言葉を残しています。

「国の偉大さと道徳的発展は、その国における動物の扱い方で分かる」

私自身も、動物の命や権利を大切にする社会は、人に対しても思いやりがあってやさしいと感じます。犬猫の殺処分がまだ約5万6000頭にのぼる日本の現状を、ガンジーが見たらどう評するだろうか。

この春、ピースワンコではまた新しい犬舎や譲渡センターができ、約20人の新人スタッフが加わります。困難を乗り越え、恥ずかしくない国になったと胸を張れる日が来ることを祈るばかりです。

保護施設からの犬の譲渡率を高める、ひと工夫。

アメリカでの研究において、里親候補者が保護犬を選ぶという状況において、引き取り率を調査したところ、「犬の自然な行動を促す」というちょっとした一工夫が、譲渡率を2.5倍にまで高めることが明らかになりました。

調査を行ったのはアメリカ・フロリダ大学の心理学研究チーム。保護施設における犬の譲渡率を高める要因を明らかにするため、仲介者が犬の自然な行動を促す「介入グループ」と、何もしない「非介入グループ」における引き取り率を調査しました。「介入グループ」の具体的な内容は、里親候補者が「犬の排泄を促してあげる」、「犬とおもちゃで遊ぶ」、「犬が候補者の横で伏せをする」というちょっとした交流を持つというものです。観察された合計160のご対面を集計したところ、「非介入グループ」の引き取り率が23.3%だったのに対し、「介入グループ」のそれは39.2%という好成績を記録したといいます。こうした知見から研究チームは、仲介者が里親候補者に対し、犬の自然な行動が発現するよう促してあげると、それだけで譲渡率がアップするという可能性を明らかにしました。

この知識は日本における保護施設でも十分応用が可能だと思われます。現在多くの施設では、悲しみに沈んだ犬の写真を公開するにとどまっていますよね?SNSで公開されている写真も、どれも悲哀に満ちたものです。しかし譲渡率を高めるためには、悲しい顔の代わりに明るい表情をとらえた犬の写真をアップしたり、丸くなって打ち沈んでいる姿の代わりにおもちゃで遊んでる姿を動画でアップしたりするといった工夫が必要となるでしょう。引き取り数が減り、保護施設の職員が一頭一頭にかけられる時間が十分に増えてくれれば、こうした取り組みも実行に移しやすくなると考えられます。

問題行動を抱えた犬の飼い主はどのような時に譲渡や安楽死を決断するのか?

アメリカの大学による調査で、『問題行動を抱えた犬の飼い主は、どのような時に、自身のペットの譲渡や安楽死を決断するのか?』という事が浮き彫りにされました。調査を行ったのはアメリカ・ペンシルベニア大学獣医学部のチームです。2008年10月から2010年10月の期間、何らかの問題行動によって、動物病院の行動医学科を訪れた犬の飼い主を対象とし、飼育放棄(他人への譲渡もしくは安楽死)を考慮するきっかけになる因子が何であるかを検証しました。

調査対象となった290頭の犬に関し、平均年齢は4歳弱、平均体重は23.2kg、純血種は61%(178頭)、ペットショップでの入手は8%(23頭)という内訳でした。ペットショップを経由して購入される小型犬が多い日本とは、統計的な下地がずいぶん異なるため、当調査のデータをそっくりそのまま日本にあてはめるわけにはいきません。しかしいくつかヒントになる項目があるので、ご紹介します。

①郊外に暮らしている

郊外に暮らしている場合、都市部に暮らしている人よりも3倍ほど犬の譲渡や安楽死を考慮する確率が高いことが明らかになりました。この傾向の背景にあるのは、犬を家族の一員というよりも番犬としてみなす風土だと推測されます。そしてこの傾向は日本においてもあるかもしれません。例えば兵庫県の動物愛護センター淡路支所は、管轄区域内の人口割合が県の5%程度しかないにもかかわらず、平成28年度に収容された犬473頭のうち26%を占めていたと言います。こうした偏った比率が生じる原因としては、放し飼いの習慣や出産管理の不徹底などが想定されています。この事実から見えてくるのは、『犬は家族ではなくあくまでも動物』という因果関係です。犬を家族ではなく所有物としてみなしている分、手放す時の精神的な抵抗が少なくなるということは大いにあるでしょう。

②獣医師ではない専門家に相談

獣医師ではない専門家、すなわちドッグトレーナーや動物行動医学者に相談したことがある人ほど、犬の飼育放棄を事前に考慮したり、3ヵ月後のタイミングで実際に飼育放棄する確率が高くなることが明らかになりました。まず考えられる可能性は、専門家と称する人が資質に欠けており、罰を用いたトレーニングや行動矯正を飼い主に指示し、結果として犬のストレスと問題行動の悪化を招いて飼育放棄につながったというものです。統計的に有意とまでは判断されなかったものの、罰ベースのしつけ方法を採用している飼い主の方が、ご褒美ベースのしつけ方法を採用している飼い主よりも犬を飼育放棄しやすい傾向が認めらたのです。考えられるもう一つの可能性は、『専門家に相談するほどそもそも犬の問題行動が深刻だった』というものです。この場合、専門家に相談したことが飼育放棄を招いたわけではなく、飼い主もしくは犬の側に原因があって飼育放棄につながったということになります。

③家族の一員との永続的な別離

家族の一員との永続的な別離を経験した犬の方が、飼育放棄の対象になりやすいことが明らかになりました。別れた家族の一員が犬の世話を担当していた場合、別離に付随して犬の世話がおろそかになり、ストレスの増大から問題行動が引き起こされた可能性があります。あるいは単純に愛着を抱いていた人との別離が犬にとってのストレスとなり、無駄吠えや常同行動といった行動として現れ、それが残された家族の気に障ったのかもしれません。

④常同行動

同じ行動を無目的に繰り返す「常同行動」を示す犬は、3ヶ月後の飼育放棄リスクが40倍、6ヶ月後のリスクが7倍に高まる傾向が確認されました。同じ場所を行ったり来たりするといったパターンの場合はそれほど実害はありませんが、前足の特定部分を延々となめ続けるといったパターンの場合は、ときとして医療問題に発展し、飼い主に心理的・経済的な負担を強いてしまいます。加えて犬自身の健康も悪化するため、「いっそのこと楽にしてあげよう」という動機が生まれやすくなってしまうのでしょうか。

⑤家庭内に13〜17歳の思春期の子供がいる

家庭内に13~17歳の子供がいる場合は、犬が飼育放棄されてしまうリスクが3ヶ月後で14倍、6ヶ月後で6.5倍に高まることが確認されました。理由としては「思春期の子供に時間を取られ、親が十分に犬の世話ができない」、「子供が思春期になると、以前ほど犬をかまわなくなる」などが考えられます。いずれにしても、犬に対して投資する時間が減るため、ストレスの増大から問題行動につながってしまう可能性を否定できません。

犬や猫の殺処分問題を考えるとき、イギリスやドイツなど動物愛護先進国のお手本として頻繁に引き合いに出される国があります。一部、盲目的に「殺処分が少ない」もしくは「殺処分ゼロ」としてもてはやす人がいますが、こうした国は行政による処分数が少ないという事しか意味していません。飼い主が動物病院に持ち込んで行う安楽死まで含めて考えないと、真の意味での殺処分問題を考えているとは言えないでしょう。例えば1998年、イギリス国内で開業している動物病院を対象として行った調査では、安楽死を受けた犬のうち問題行動に原因があるものは全体のたった5.9%だったとされています。また2003年にデンマークで行われた調査では、安楽死のうち犬の問題行動が原因だったものは6.4%だったとも。今後、欧米諸国を動物福祉のお手本として引き合いに出すときは、飼い主が臨床上健康な犬に対して行う安楽死の数も含めて考慮しないと、理想的とはいえない国を教科書にしてしまうことになりかねませんよね。

『8週齢問題』がもたらす、問題行動による飼育放棄のリスク

日本とアメリカにおける犬の行動特性を統計的に比較したところ、ペットショップから入手した小型犬は、問題行動の危険因子になり得ることが明らかになりました

調査を行ったのは、日本とアメリカによる共同研究チーム。チームは日本とアメリカの両国に暮らしている飼い主に対し、アンケート調査を行い、犬の持つ様々な属性が行動にどのような影響を及ぼすかを統計的に精査しました。

ペットショップで購入された3ヶ月齢以下の犬では「見知らぬ人への攻撃性」「過剰な活動性」「無生物に対する恐怖」「見知らぬ犬への恐怖」「見知らぬ犬への攻撃性」がブリーダー経由の犬よりも高くなる傾向があった事が分かりました。こうしたデータから研究チームは、犬をペットショップで購入する機会が多く、また人気が小型犬に偏っている日本においては、そうした入手ルート自体が問題行動を悪化させるリスクファクターになっているという可能性を指摘しています。

小型犬と問題行動の関連性に関しては一般的に「小型犬効果」と呼ばれ、過去に行われた様々な調査において、その普遍性が指摘されています。一方、犬の入手先と問題行動との関連性に関しては、昔から「ペットショップから入手した犬では、支配性攻撃行動と社会性の恐怖心が高まる」と指摘されています。また近年行われた調査では「ペットショップ経由の犬は同居している人間、見知らぬ人間、他の犬に対する攻撃性が強い/他の犬や無生物に対する恐怖が強い/分離不安や粗相の問題が多い」との結論に至っています。こうした調査結果は「早すぎる離乳は、犬の問題行動の直接的・間接的な原因になりうる」という主張を裏付ける実証データになり、日本における「8週齢問題」を議論するときの論拠になってくれるでしょう。

しかしながら、現在日本国内のペット業界は生後45日から60日くらいの子犬や子猫を売っています。これは、早く飼い主の元に届けないと、大事な社会化期が終わってしまう、ということのほかに、日齢が進めば進むほど子犬や子猫は大きくなり、母性本能をくすぐるようなかわいらしさが徐々に薄れていき、売り上げが落ちてしまう、という事情があるためです。一方、一部の動物愛護派は、この販売時期は動物の性格を形成する上で重要な社会化期の絶頂期(6~8週齢)とバッティングするため、将来的に攻撃性や人見知りなど、問題行動の遠因となる可能性があるとし、反対の姿勢を示しています。

国はどうかというと、2012年8月22日、民主党の環境部門会議で動物愛護法改正案が了承され、生後56日(8週齢)以下の子犬や子猫について、繁殖業者からペット販売業者への引き渡しが禁じられる見通しになりました。これは上記した通り、子犬を親から早期に引き離すと十分な社会性が身につかず、将来的に問題行動が多発して飼い主が飼育放棄する、という犬猫殺処分の一因を減らすことを目的としたものです。法施行後の3年間は「生後45日」(6週齢ごろ)、その後は「生後49日」(7週齢)とし、施行後5年以内に「生後56日」(8週齢)が適切かどうかを、環境省が改めて調査・検討するという流れになります。  ペット業者と動物愛護派のちょうど中間を取ったような法案ですが、「午後8時以降、ペットの展示販売禁止」とともに、この改正案が日本国内の殺処分数にどのように影響するかに注目が集まります。